そもそも、日本製品(Made in Japan)が長持ちするのは品質が良いのではなく輸送環境によるものという話です。
私が製造業で働いていた時に知った話で、レポートを読んだのではなく人から聞いた話なので細かいところは確認できません。しかし、話としては成立しているのでここに書きます。
(製造業での私の職種は設計と生産技術で製品図面を描いて金型を手配するのが仕事でした。)
この話に登場する会社(メーカー)の名前は不明です。年代については1914年以降の話とだけわかっています。(後述しますがパナマ運河ができたのが1914年なので)
日本製品が長持ちするようになるまで
まずは長持ちする日本の製品の例です。
日本製品が長持ちするわかりやすい例
欧米からの輸入車のプラスチック部品は長持ちせず経年劣化で壊れやすいですが、日本車のプラスチック部品の方は輸入車より長持ちします。新車登録から20年以内だったら壊れることはほとんど無いです。これついては経験した事がある人が多くいると思います。そして、その理由がこの記事を読めばわかります。
日本製品は長持ちしない時代があった
日本製品は確かに安いが壊れやすく長持ちしない。と欧米の市場で扱われていました。安かろう悪かろうの時代があったのです。しかし、日本のメーカーはその理由がわかりませんでした。
何故なら、欧米のメーカーと同じ評価試験で製品をテストして、試験に合格した物を量産して作っていたからです。評価試験にはもちろん耐久性を確認する試験も含まれています。
しかし、確かに日本製品は欧米のメーカーと比べると長持ちせず壊れやすかったのです。
日本のメーカーが最初にやったこと
製造業で問題が起きた時の基本は、評価試験の追試と品質管理の確認です。
評価試験の追試
まずは、やったのが評価試験の追試です。試験する製品の数を増やしてこの追試を行いました。しかし、結果はやはり試験に合格するのです。原因がわかりませんでした。
品質管理
次に、製造現場で問題が起きているのでは?と考えて製造現場の品質管理を徹底的にやりました。しかし、やはり製造現場で品質管理上の問題は見つからず。原因がわかりませんでした。
そして、原因がわからないので、日本製品は欧米の市場では長持ちせず壊れやすいままでした。
ある特徴に気づく
日本のメーカーは何も手を打てない状態が続きましたが、ついに、ある特徴があるのに気づきました。
それは、”飛行機で運ばれた製品は長持ちするが、船で運ばれた製品はすぐに壊れる”です。
日本のメーカーは船で運ばれるルートを調べました。
そのルートは”日本 → 太平洋 → 中米パナマ運河 → 大西洋 → 米国東海岸やヨーロッパ”です。
そして、原因に気が付きました。その原因は中米にあるパナマ運河だったのです。
原因はパナマ運河
パナマ運河が原因になる理由は次の2つです。
- 高温多湿の気候
- 運河を通過するのに時間がかかる
つまり、日本のメーカーは高温多湿の環境下に製品を一定期間保管して、そのダメージを受けた製品を欧米の市場で売っていたのです。そして、製品をテストする評価試験の条件は欧米などの使用環境を基に決められたものでした。欧米での使用環境よりも輸送環境の方が条件が厳しかったのです。
次の解決策の話をする前に、パナマ運河について詳しく説明します。
パナマ運河とは
まず、パナマ運河は赤道の近くにあり、1年中、高温多湿の亜熱帯気候です。
そして、運河を通過するのに時間がかかるのは、パナマ運河が閘門(こうもん)式だからで。普通の運河は大きな川のようになっていますが、パナマ運河は高低差があるため船をドックに入れたら水位を変えて次のドックや水路に船を移す必要があります。
このような運河を閘門式と言います。
パナマ運河を横から見た図
引用元:参考動画1のパナマ運河の構造
ドックの水位を変えて船を持ち上げたり降ろしたりするので通過に時間がかかります。動画で見た方が分かり易いので載せておきます。参考動画1と2。
参考動画1
参考動画2
問題を解決する
原因がわかったので日本のメーカーは解決策を考えました。
日本製品が荷物として入るコンテナに空調を付けるなど改造をして温度や湿度を防げば良いのですが、どのコンテナに入れるかの指定が出来ません。衣類や食料品等とごちゃ混ぜにしてコンテナに入っていたからです。なのでコンテナでの対策は諦めました。そして最終的に次の解決策を取りました。
輸送環境に耐えられる評価試験に変更
評価試験の条件の内、高温と湿度の試験条件を輸送環境に合わせて厳しくしました。そして、この試験に合格できる材料や形を採用して、製品の設計をやり直したのです。
そして、その結果できた日本製品は欧米の市場で長持ちする物になったのです。
日本製品が長持ちする理由は、欧米のメーカーより製品をテストする評価試験の条件が厳しいからで、それは使用環境よりも輸送環境の方が条件が厳しいからです。
品質が良いから長持ちになったのは
しかし、一般のユーザーはこの試験条件が違うことを知らないので「日本製品は品質が良いから長持ちする」と勘違いされました。確かに日本のメーカーは品質管理に力を入れていたのも事実で、そのイメージが強かったのです。
日本へ船で入る欧米の製品
当然、船を使って、逆ルートで日本へ入る欧米のメーカーの製品はありますが、欧米のメーカーはこのパナマ運河の対策をしませんでした。
何故なら日本が市場としては小さいからで、小さい市場のために試験を変えて設計をやり直したりはしないからです。欧米のメーカーは修理や商品交換で対応しました。
まとめ
2019年現在では日本の製造業は過去と比べると衰えてきています。そして、中国や東南アジアなど世界中の国々でも製造業を行っていて、その評価試験がどのようになっているかは私は知りません。私自身がもう製造業では働いていないので。
しかし、Made in Japan(日本製品)が世界に行きわたり、日本の製造業が発展した理由の一つがこの地理的環境によるものでした。
輸送環境が厳しく、それを解決した結果、長持ちする日本製品ができたのです。
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