【障がい者雇用を考えるシンポジウム】で障がい当事者としてスピーチをしました。
私が住んでいる市役所が開催したものです。
今の職場を紹介してくれた障がい者しごとサポーターの依頼です。
実際に障がい者雇用で働いている人にお願いしているのですが、引き受けてくれる人がいないのです。
身体障がい者の人はいるのですが、精神障がい者の人はいません。
タケシさんやってくれませんか?
仕事を紹介してもらったし…。
う…ん、
わかりました!やります!
その結果、実名も障がいの内容も公表して100人以上もの人々を前にして15分間話す事になりました。
引き受けなければ良かったかも…。
どうも私には変な義務感というか責任感があります。
逃げる時は逃げていいと思います。
シンポジウムでスピーチをする依頼書
さっそく自宅に依頼書なるものが届きました。
その内容です。
平成25年*月*日 **(株) **殿
**市自立支援協議会 会長 **
シンポジウムについて(ご依頼)
拝啓 時下益々御清栄のこととお慶び申し上げます。
平素より当協会活動にご理解とご高配を賜り誠にありがとうございます。
さて、*月*日(*)にご依頼をさせていただいておりますシンポジウム「障がい者雇用を考える」について、詳細が確定いたしましたので報告をさせていただきます。
詳細につきましては、下記をご確認ください。
また、ご不明な点がございましたら、お手数ですが事務局までご連絡ください。
ご多用のところ大変恐縮に存じますが、何卒、よろしくお願い申し上げます。
敬具
記
1.講演会 障がい者雇用を考える
2.講演内容 障がい者雇用の現状と課題に関するシンポジウム
3.開催日時 平成25年*月*日(*)13:30~15:00
4.開催場所 **市役所 **会議室
5.対 象 障がい者雇用に関心のある企業担当者、当事者、市民120名程度
6.タイムスケジュール
- 13:00 コーディネーター、シンポジスト打合せ
- 13:30 開始、挨拶
- シンポジウム(お一人15分程度☓4名)
- 質疑応答
- 15:00 終了
7.講演内容 ご講演にあたり、以下の内容についてご配慮いただければ幸いです。
- 自己紹介(経過を含めてお願いいたします)
- 現在の業務内容について
- 仕事を続けるために工夫していること
- 体調不良時の対応
- 参加者に伝えたいこと など
以上
必死で原稿を作ってスピーチしました。
「ご講演にあたり、以下の内容についてご配慮いただければ幸いです」と書いてあったのでその内容に沿って作成しました。
障がい者になる前の普通に正社員で働いていた時でも、さすがに100人以上を前にスピーチをしたことがありませんでした。
私はずっと技術職だったからです。
そして、当日にシンポジウムで話す人は、障がい者しごとサポーター、障がい者を雇用している会社の人、身体障がい者、私の四名だけでした。
私がスピーチした内容の原稿になります。
こんにちは、ご紹介頂きました、タケシと申します。
年齢は40歳で、テクノプロサポート株式会社に障害者雇用で採用されています。
どうぞよろしくお願いいたします。
自己紹介(経過を含めてお願いいたします)
まずは簡単に私の障害及び病気の経過についてご説明いたします。
障がいの区分は精神障がいで病名は統合失調症です。
症状は陰性症状で倦怠感等のうつ病と似た症状を抱えています。
簡単に言うと他の人に比べて頭が疲れやすくストレス耐性も低く、体調を安定させるためには、十分な睡眠と休憩が必要で、労働や活動時間の制限が必要になります。
病歴ですが、33歳の時、約7年前に入院して今の病名と診断されました。
この時に主治医から聞いた今後の経過ですが、陰性症状の予後は悪いと言うものでした。
まず薬は一生飲み続けることになると言う事。
デイケアや作業所等の施設を使ったリハビリが有効で必要であると言う事。
また、その当時のおおまかな統計では、普通の人と同等の労働・社会的生活が出来るのは、10年後で約50%と言うものでした。
ただし、これは同じ陰性症状の方全てに当てはまるのでは無く、症状の重い軽いもあるので、患者ごとによって変わると思います。
次に退院後ですが、休養をした後に、デイケアを使ったリハビリを約一年間行いました。
その後ですが、実は、障がい者手帳を取得してから障がい者雇用で働いたのは、現在の職場が初めてではなく、2社目です。
初めて障害者雇用で働いたのは、デイケアでのリハビリを1年終えた後です。
35歳の時で、約5年前になります。
仕事はパートでの事務職でした。
そこでは何度か体調を崩して1か月程度の休職をしながら働きましたが、38歳の時、約2年半前に事業所移転のため退職となりました。
また、退職時は体調を大きく崩して休職をしていたので、直ぐに就職活動は出来ず、休養後にデイケアを使ったリハビリを行う必要がありました。
そして、またデイケアを使ったリハビリを約1年行い、その後は作業所を併用しながら就職活動を行いました。
そして、約1年半前に障害者しごとサポーターの**さんの紹介で現在のテクノプロサポート株式会社に採用されて現在にいたります。
現在の業務内容について
次に会社や業務内容についてご説明をさせて頂きます。
まず、私を雇用しているのはテクノクロサポート株式会社で、人材派遣事業も行っている会社です。
派遣されて、勤務しているのは、その親会社で東芝コンシューママーケティング株式会社と言います。
私はその会社の海老名市の事業所で、持ち込みの家電製品の修理を行う部署に所属しています。
私の位置づけは修理のアシスタントで、修理担当者の指導のもとで働いています。
仕事内容は、お客様からお預かりした家電製品の壊れた部品を交換して、テスト動作をして、直ったかの確認をして、清掃等もしています。
また、パソコンを使って修理に必要な部品の手配や修理内容を入力する作業も行っています。
修理の仕事ですが、具体的にどのような作業をしているかを口頭だけで説明するのは難しいのですが、社外秘等もございますので、写真等で説明することができません。
ですので、私が使っている道具、工具でご説明します。
実際に道具を持って来れば良かったのですが、準備不足で済みません。
口頭だけになります。
製品を分解したり組み立てたりするのには通常のドライバーだけではなく精密ドライバーや電動ドライバーを使います。
電動ドライバーはピストル型のトリガーがついている物です。
製品内の部品の取り外しや取り付けにも使います。
また、基板に付いている部品や配線を付ける為に半田ゴテも使用しています。
あとは測定用にテスターも使います。
部品が壊れていないか抵抗値を計って確認したり。
断線などせずに正常に通電しているか電圧を計ったり。
出力調整もするので、ワット数を計って確認しながら行うのにも使います。
その他に、仕事上のコミュニケーションについてですが、これは社内の他の人と同じく普通にとっています。
もちろん、私の仕事内容のレベルに応じたものですが。
イレギュラーな対応をする時にどうすれば良いのか相談をしたり、電話で他の部署の方に簡単な承認をもらったり、逆に進捗状況等を聞かれることもあります。
ただし、直接お客様とお話しする事だけはありません。
これは採用時の面談で、私が出した要望でもあります。
私の要望は次のようになります。
「電話も含めコミュニケーション等の対人関係の配慮は必要ありません。
しかし社外の方、お客様等と直接お話をするのは控えさせて下さい。」
と申し出ました。
理由は、話の途中で私の勤務時間が終わったり、休憩時間が来ても、話を中断することが出来ないからです。
最初に私の病気・症状の話をしましたが、体調を維持するには休憩や労働時間の制限はとても重要な事なのです。
仕事を続けるために工夫していること
続いて、このように体調を維持して、私が仕事を続けるために工夫していることの話になります。
よく頑張って仕事に行くと言う人がいますが、頑張ることは出来るのですが、自分の病気の特性上、疲労が蓄積しやすいので、頑張り続けるというのがとても困難です。
と言いますか、経験上ほぼ不可能で、必ずどこかで体調を崩します。
これはデイケアでのリハビリ中に何度も経験しています。
ですので、私は頑張って仕事に行くのではなくて、頑張って充分に休んで、頑張らないでも仕事に行けるような体調にするよう、体調管理を注意しています。
具体的には、早寝早起きをしています。
理由は睡眠が浅かったりして、前日の疲れが翌日に持ち越した場合に、出勤までに時間的余裕があると二度寝をしたり休んだりして、疲れを取ってから出勤することが出来るからです。
朝起きて体調が良ければ、自分の趣味などの時間に当てています。
ただ、残念なのは、サッカーの国際試合やボクシングのタイトルマッチをテレビの生放送で見たいのですが、ゴールデンタイムに集中することが多く、録画して翌日以降に観ることになります。
また、土日休みなのですが、日曜日だけは遠出するなどの予定は入れないで、1週間の疲れをとるようにしています。
実は、今の職場で働きはじめて半年ほど順調に経過した時に、働いても体調が安定しているので、少しはプライベートを充実させようと、休日の活動が活発になり、休職とはいかないでも体調が不安定になった時期がありました。
自分ではストレス発散の意味もあったのですが、どんなに楽しいことをしても、活動量に応じて疲れは必ずでると言う事でした。
このような感じで体調管理に注意はしているのですが、体調不良になる事はあります。
体調不良時の対応
私の体調不良時の対応ですが、残念ながら本当に体調不良になってから出来るのは、体を休める対応しかできません。
当然、そうなれば、遅刻・早退・欠勤となります。
そして、体調が悪いのに無理をすると、もっと体調が悪い状態でより長い期間休む事になってしまいます。
私の場合、今のところ、長期間休んだのはインフルエンザで一週間休んだことだけです。
すごく軽い体調不良であれば、仕事のペースを落としたり、簡単な作業を優先して行ったりで対応できますが、これは疲労の蓄積は抑えられるものの、蓄積した疲労を取り除くことは難しいのであまりお勧めはできません。
もちろん、あくまでも私個人の経験則で一般化は出来ないと思います。
私の経験上では、体調不良を引き起こしたり誘発したきっかけと言うか要因は、前日や直近1週間前にあります。
しかし、根本的な原因そのものは1ヶ月前から3か月前ぐらいの仕事を含めた生活状態にあります。
内容は、仕事のペースが気が付かないうちに早くなり過ぎていたり、休日や仕事以外の活動時間が増えていたり等です。
体調不良でかつ仕事を続けるとなると、一度プライベートのスケジュールを白紙にして、とにかく寝て休む時間を出来るだけ増やすことにしています。
参加者に伝えたいこと
先ほどから話の中で「自分の経験則で一般化は出来ないと思う」と言う発言が多いのは、同じ病気でも全く違うものになるからです。
精神障がい者の方であれば、こういった自分独自の経験則による体調管理の方法をデイケアや作業所を使ったリハビリの中で習得しておけば、働きながらの体調管理に役に立つと思います。
また、私の場合も先ほど、勤務して半年後に体調不安定になったとお話ししましたが、実は、順調に行っている時に限って油断して、体調を崩すパターンが多いと思います。
これは障害者自身が「仕事にも慣れて、体調も悪くなってないから順調にやっていける」と思った時と、雇用している会社の方が「仕事にも慣れてくれたし、体調も安定しているし、ほっといても、もう大丈夫だろう」と思った時の両方があり、実はこの時が一番危ないと思います。
最後に…
最後になりますが、自分が働き続けていることでお礼を言いたい方々がいます。
障害者しごとサポーターの**さんや職場の方々は当然なのですが、私が障がい者雇用で働く前、何年前かどこに住んでるかもわかりませんが、私と同じ病気を抱えながら働いた、もしくは働き続けている方々です。
その人たちは今の私の場合より、医療も制度もサポートも社会的認知も充実してない状況で働いた方々で、その人達がいたから自分にチャンスがあったのだと思っていますし、感謝しています。
以上になります。ありがとうございました。
ご清聴じゃなくて、最後までお読みいただきありがとうございます。
シンポジウムのスピーチを終えて
実は一番は私が言いたかったのは「最後に…」の内容なのです。
医者などの医療従事者や薬を開発した人々よりも、同じ病気をかかえた先人達にお礼を言いたかったのです。
私は自分がやりたいことをやるだけです。
人のためにではありません。
しかし、それが何年後何十年後かわからない誰かの役に立てればと思います。
せっかく人として生まれたのだから人らしく生きます。
ほとんど棒読みで文章を読んだだけでしたがスピーチは無事終わりました。
質疑応答では、直接の質問はほとんどなくて「給料が安い!」等の制度による不満などでした。
私が答える内容ではないので、障がい者しごとサポーターさんにおまかせしました。
私の経過
仕事は引き続き同じ職場で働き続けています。
勤務時間などもまったく同じですが、働き続けています。
デイケアはもう利用していないです。
卒業しました。
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